目次
- 1. 第1章 家族信託とは?簡単にいうと
- 2. 第2章 家族信託の3つの登場人物
- 委託者とは?
- 受託者とは?
- 受益者とは?
- 3. 第3章 なぜ認知症対策として家族信託が検討されるの?
- 4. 第4章 家族信託でできることは?
- 預貯金などの財産管理
- 不動産の管理
- 将来の不動産売却に備える
- 賃貸不動産の管理
- 5. 第5章 家族信託でできないこと・解決しないこと
- 身元保証人になる制度ではありません
- 医療同意の制度ではありません
- 実際の介護をしてもらう制度ではありません
- すべての財産が自動的に管理対象になるわけではありません
- 6. 第6章 家族信託と成年後見は何が違う?
- 7. 第7章 家族信託と任意後見の違いは?
- 8. 第8章 家族信託をすれば遺言はいらない?
- 9. 第9章 家族信託と死後事務は同じ?
- 10. 第10章 家族信託にはどんな費用がかかる?
- 11. 第11章 家族信託を検討しやすいケース
- 12. 家族信託が向かない場合もある?
- 13. 第12章 家族信託の相談はいつするべき?
- 14. 第13章 高齢者支援の現場では「財産だけ」を見ないことが重要
- 15. 第14章 東京都で家族信託を検討するとき
- 16. 第15章 東京都社会福祉支援センターへ相談できること

家族信託完全ガイド|仕組み・費用・認知症対策・成年後見との違い
「親が認知症になったら、預金や実家はどうなる?」
「将来、子どもに財産管理を任せたい」
「家族信託と成年後見は何が違う?」
高齢になった親の財産管理を考え始めると、「家族信託」という言葉を目にすることがあります。
家族信託は、認知症などで将来判断能力が低下することに備え、元気なうちから財産管理の方法を決めておける仕組みです。
しかし、家族信託ですべての老後問題を解決できるわけではありません。
成年後見、任意後見、遺言、身元保証、居住支援、死後事務などとは役割が異なります。
大切なのは「家族信託をするか」から考えるのではなく、「将来、何に困る可能性があるのか」を整理することです。
第1章 家族信託とは?簡単にいうと
家族信託とは、財産を持つ本人が、信頼できる家族などに財産を託し、あらかじめ定めた目的に従って管理・処分してもらう仕組みです。
一般に「家族信託」と呼ばれていますが、法律上「家族信託」という名前の独立した制度があるわけではなく、信託法に基づく民事信託の活用方法として使われている呼び方です。
例えば、
高齢の父
↓
自宅や賃貸不動産などの管理を長男へ託す
↓
長男が契約で定めた目的・権限の範囲で管理する
↓
利益は父のために使う
という設計が考えられます。
本人の判断能力があるうちに将来の財産管理について仕組みを作っておける点が、大きな特徴です。
第2章 家族信託の3つの登場人物
家族信託を理解するときは、
「委託者」
「受託者」
「受益者」
の3つを理解すると分かりやすくなります。
委託者とは?
財産を託す人です。
例えば父親が自分の不動産を息子へ信託するなら、父親が委託者になります。
受託者とは?
財産を託され、信託契約に従って管理・処分する人です。
先ほどの例なら息子です。
受託者は「自分の財産になったから好きに使っていい」という立場ではありません。
信託目的に従って適切に管理する必要があります。
受益者とは?
信託財産から生じる利益を受ける人です。
父親が委託者であり受益者でもある形も考えられます。
つまり、
財産を託す人=父
管理する人=子
利益を受ける人=父
という仕組みです。
第3章 なぜ認知症対策として家族信託が検討されるの?
ポイントは「判断能力」です。
契約や財産処分を行うためには、その行為を理解して判断できる能力が必要になります。
例えば高齢の親が所有している実家について、
「将来施設へ入ったら売却して、そのお金を施設費用に使おう」
と家族で考えていたとします。
しかし実際に売却が必要になった時点で本人の判断能力が大きく低下していれば、家族だからという理由だけで子どもが本人名義の不動産を自由に売却できるわけではありません。
そこで、本人が判断できるうちに将来の財産管理方法を設計する選択肢の一つとして家族信託が検討されます。
重要なのは、
「認知症になってから考えればいい」
ではないことです。
家族信託は契約です。
本人が契約内容を理解して意思表示できることが重要になります。
第4章 家族信託でできることは?
契約内容や信託する財産によって異なりますが、代表的には次のような活用が考えられます。
預貯金などの財産管理
信託した金銭について、契約で定めた目的に従って受託者が管理します。
不動産の管理
実家や賃貸不動産などを信託財産とし、受託者が契約で与えられた権限の範囲で管理する仕組みを作ることができます。
将来の不動産売却に備える
本人の老後の生活費・介護費・老人ホーム費用等を確保するため、一定の場合に信託不動産を売却できるよう設計することも考えられます。
ただし実際にどこまでできるかは信託契約の内容等によります。
「家族信託をした=何でも自由に売却できる」
という意味ではありません。
賃貸不動産の管理
家賃収入のある不動産について、受託者が管理を続ける仕組みを設計することもできます。
第5章 家族信託でできないこと・解決しないこと
ここは非常に重要です。
家族信託は「家族に老後のことを全部任せる制度」ではありません。
身元保証人になる制度ではありません
老人ホームや入院時に身元保証人・身元引受人・緊急連絡先を求められる問題と、家族信託による財産管理は別問題です。
家族信託をしたから、
「老人ホームの身元保証問題も解決する」
とは限りません。
医療同意の制度ではありません
家族信託を締結したことによって、受託者に医療行為への包括的な同意権が生まれるわけではありません。
実際の介護をしてもらう制度ではありません
食事、排泄、掃除、通院介助、見守りなどの生活支援・介護と財産管理は分けて考える必要があります。
すべての財産が自動的に管理対象になるわけではありません
家族信託は、信託契約等で対象とした財産を管理する仕組みです。
本人のすべての財産・法律行為を包括的にカバーする制度ではありません。
第6章 家族信託と成年後見は何が違う?
家族信託と成年後見は、似ているようで目的と仕組みが異なります。
家族信託は、本人が判断できる段階で、将来の財産管理方法を自分で設計する仕組みです。
成年後見制度は、判断能力が不十分になった方の権利・財産・生活を法律面から支援する制度です。
主な違いを整理すると、
家族信託
・本人が判断できるうちに設計する
・本人が受託者等を決められる
・信託した財産が中心
・契約で定めた範囲で管理する
成年後見
・判断能力が不十分になった方を保護・支援する
・法定後見では家庭裁判所が後見人等を選任する
・本人の財産管理や法律行為等を支援する
・本人保護が中心
という違いがあります。
どちらが優れているというものではありません。
「何を解決したいのか」で考えることが重要です。
第7章 家族信託と任意後見の違いは?
任意後見も、本人の判断能力が十分なうちに将来へ備える制度です。
ただし役割が違います。
家族信託は主に、
「どの財産を、誰に、どのように管理してもらうか」
を設計します。
任意後見は、
「将来判断能力が不十分になったとき、誰に法律行為等を支援してもらうか」
をあらかじめ決める制度です。
そのため、家族信託と任意後見を必ず二者択一で考える必要はありません。
状況によっては、それぞれの役割を組み合わせて備える考え方もあります。
第8章 家族信託をすれば遺言はいらない?
必ずしもそうではありません。
家族信託と遺言も役割が異なります。
家族信託では、信託した財産について、本人死亡後の承継方法を一定の範囲で設計できる場合があります。
一方、遺言は死亡後の財産承継等について本人の意思を残す重要な仕組みです。
信託していない財産がある場合なども含め、
「家族信託をしたから遺言は不要」
と一律に考えない方が安全です。
財産全体を見て設計する必要があります。
第9章 家族信託と死後事務は同じ?
違います。
死後事務では、
葬儀
納骨
行政手続き
公共料金等の解約
賃貸住宅の明渡し
家財・残置物
各種契約の整理
など、死亡後の事務を扱います。
家族信託は主として財産管理の仕組みです。
そのため、
「財産を誰に管理してもらうか」
と、
「自分が亡くなった後、誰に何をしてもらうか」
は分けて考えることが重要です。
特におひとりさまや身寄りが少ない方は、
家族信託
任意後見
遺言
死後事務
などを役割別に整理する必要があります。
第10章 家族信託にはどんな費用がかかる?
家族信託の費用は一律ではありません。
信託する財産、契約内容、不動産の有無、専門家へどこまで依頼するかなどによって変わります。
主に考えられるのは、
・契約書作成等を専門家へ依頼する費用
・公正証書を利用する場合の費用
・不動産を信託する場合の登記関連費用
・登録免許税
・その他、信託設計に必要な費用
などです。
そのため、
「家族信託は○万円」
と一律に判断しないことが大切です。
特に不動産を含む場合は、登記・税務も関係するため、事前に専門家へ確認することが重要です。
第11章 家族信託を検討しやすいケース
例えば、
・高齢の親が不動産を所有している
・将来認知症になった場合の財産管理が心配
・賃貸不動産の管理を子どもへ引き継ぎたい
・将来老人ホームへ入ったら実家売却を検討したい
・財産管理を任せられる家族がいる
・本人がまだ十分に意思表示できる
・老後の財産管理について家族で話し合っておきたい
といった場合は、家族信託について専門家へ相談してみる余地があります。
ただし、当てはまるから必ず家族信託が必要という意味ではありません。
家族信託が向かない場合もある?
あります。
例えば、
・信頼して財産管理を任せられる受託者候補がいない
・すでに本人の判断能力が大きく低下している
・解決したい問題が財産管理ではない
・身元保証だけが問題になっている
・死後の手続きだけが心配
・対象財産や目的から見て別の制度の方が適している
などです。
制度ありきで考えないことが大切です。
第12章 家族信託の相談はいつするべき?
「まだ元気だから早すぎる」
とは限りません。
家族信託は本人の意思に基づく契約です。
そのため、将来の財産管理について本人自身が考え、家族と話し合える段階で検討することが重要です。
特に、
最近もの忘れが増えた
実家の将来を考え始めた
老人ホーム入居を将来的に考えている
不動産管理が負担になってきた
といったときは、
「契約するかどうか」
ではなく、
「将来どうしたいか」
を家族で整理し始めるタイミングと考えられます。
第13章 高齢者支援の現場では「財産だけ」を見ないことが重要
高齢期の問題は、財産管理だけで完結しないことがあります。
例えば、
父が認知症になった
↓
自宅での生活が難しくなった
↓
病院へ入院
↓
退院後の住まいが必要
↓
老人ホームを検討
↓
身元保証人が必要
↓
実家をどうするか
↓
死亡後の手続きも心配
というように、問題がつながっていくことがあります。
この場合、
家族信託だけ
成年後見だけ
老人ホーム紹介だけ
身元保証だけ
を単独で考えても、生活全体の問題は整理できない可能性があります。
だからこそ、
本人の意思
財産
住まい
介護
医療
保証人
生活支援
終活
死後
を分けて整理し、必要な支援を組み合わせる視点が重要です。
第14章 東京都で家族信託を検討するとき
家族信託は契約内容によって将来の財産管理が大きく変わります。
不動産、税務、相続、遺言等が関係する場合もあるため、
「インターネットで契約書を見つけて自分で作ればいい」
とは考えず、内容に応じて司法書士・弁護士・税理士等の専門家へ確認することが重要です。
一般社団法人東京都社会福祉支援センターでは、法律・登記・税務の専門資格者しか行えない業務をセンターが代わって行うものではありません。
私たちが大切にしているのは、
「家族信託をしたい」
という相談だけを見るのではなく、
「なぜ家族信託を考えているのか」
を整理することです。
第15章 東京都社会福祉支援センターへ相談できること
例えば、
「認知症になる前に何か準備したい」
「親の実家を将来どうすればいい?」
「成年後見と家族信託のどちらを考えればいい?」
「老人ホームへ入った後の家が心配」
「身元保証人もいない」
「おひとりさまで死後のことまで不安」
という段階からご相談いただけます。
一般社団法人東京都社会福祉支援センターでは、
老人ホーム紹介
身元保証・身元引受
居住支援
退院支援
緊急連絡先
生活支援
終活
死後事務
相続・不動産に関する相談
など、高齢期の生活全体について問題を整理します。
家族信託・成年後見・遺言等について法律・登記・税務上の専門判断が必要な場合には、適切な専門家への相談が必要です。
制度を決めてから相談する必要はありません。
「家族信託という言葉を聞いたけれど、自分の家族に必要なのか分からない」
というところからで構いません。
大切なのは、
「どの制度を使うか」
より先に、
「これからどんな暮らしをしたいのか」
「そのために何を準備する必要があるのか」
を整理することです。
住まいから、その先の暮らしまで。
ご本人とご家族に必要な支援を一緒に考えていきます。
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