認知症の親の家を売る方法|判断能力・成年後見・家族信託・老人ホーム費用まで徹底解説【2026年最新版】

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目次


はじめに|認知症になっただけで家が売れなくなるわけではありません

「認知症の母が老人ホームへ入居したため、空き家になった実家を売却したい」

「親名義の家を売って、施設の入居費用や毎月の利用料に充てたい」

「子どもである自分が、親の代わりに売買契約を結べないのか」

このようなお悩みを抱えているご家族は少なくありません。

最初に結論をお伝えすると、親が認知症と診断されたという理由だけで、不動産を一切売却できなくなるわけではありません。

重要なのは、病名そのものではなく、売買契約を結ぶ時点で、本人が不動産売却の内容や結果を理解して判断できる状態にあるかどうかです。

本人が売却内容を理解し、自分の意思で契約できるのであれば、認知症の診断を受けていても、本人が売主となって売却できる可能性があります。

一方、本人の判断能力が低下し、

  • どの不動産を売るのか
  • いくらで売るのか
  • 売却すると所有権を失うこと
  • 売却代金をどのように使うのか

などを理解できない場合は、本人が有効な売買契約を結ぶことが難しくなります。

この状態で子どもが親の名前を使ったり、形式的な委任状を作ったりして売却を進めると、後から契約の有効性を争われる危険があります。

すでに判断能力が低下している場合は、成年後見制度を利用し、家庭裁判所が選任した成年後見人等が本人の代理人として売却する方法を検討します。

また、本人が元気なうちに家族信託を設定していた場合は、受託者となった家族が信託契約の範囲内で不動産を売却できる可能性があります。

この記事では、認知症の親の家を売るために必要な判断を、次の順番で詳しく解説します。

  • 認知症の親の家が売れないといわれる理由
  • 本人に判断能力がある場合の売却方法
  • 判断能力が低下している場合の成年後見制度
  • 居住用不動産を売る際の家庭裁判所の許可
  • 家族信託を利用している場合の売却
  • 老人ホーム費用と売却代金の管理
  • 身元保証・相続・死後事務まで含めた準備
  • 売却で失敗しないための注意点

親御様の状況によって必要な手続きは大きく異なります。

「認知症だから売れない」と決めつけるのでも、「家族だから代わりに売れる」と判断するのでもなく、まずは本人の判断能力と、不動産の名義・利用状況を正確に確認することが大切です。


第1章 認知症の親の家を家族だけで売れない理由

親名義の家は、親本人の財産です

親子であっても、親名義の不動産は親本人の財産です。

子どもが介護をしている、同居している、固定資産税を支払っているという事情があっても、それだけで売却権限を持つわけではありません。

不動産を売るためには、原則として所有者本人が売却に同意し、売買契約を結ぶ必要があります。

不動産の所有者が父親であれば父親、母親であれば母親が売主です。

夫婦の共有名義であれば、それぞれの持分について、原則として各共有者の意思確認が必要になります。


売買契約には内容を理解する能力が必要

不動産売却は、日用品の購入とは異なる重要な契約です。

売主は少なくとも、

  • 所有している不動産を売ること
  • 売却価格
  • 買主へ所有権が移ること
  • 引渡し後は原則として自由に使えなくなること
  • 売却に伴う費用や税金が発生する可能性

などを理解している必要があります。

認知症には軽度から重度まで幅があり、症状も人によって異なります。

認知症と診断されていても、会話や判断が十分にできる方もいます。

反対に、正式な診断を受けていなくても、売却内容を理解できないほど判断能力が低下していることもあります。

したがって、診断名だけで売却の可否を決めることはできません。


子どもが代理人になるには本人の有効な委任が必要

本人が売却内容を理解できる段階であれば、子どもへ売却手続きを委任する方法があります。

その場合でも、本人が、

  • 誰に代理を頼むのか
  • どの不動産を売るのか
  • どこまで権限を与えるのか

を理解し、自分の意思で委任することが必要です。

本人の判断能力が失われた後に、子どもが委任状を用意して署名だけを求めても、有効な代理権が成立しているとは限りません。

また、不動産会社、司法書士、買主、金融機関などが本人確認を行う過程で、本人の意思能力に疑問が生じれば、手続きが止まる可能性があります。


過去に作った委任状でも何でもできるわけではない

「数年前に親から委任状をもらっているので売却できる」と考える方もいます。

しかし、一般的な財産管理の委任状があっても、不動産売却について具体的な権限が含まれていなければ、十分とは限りません。

さらに、委任後に本人の判断能力が低下した場合、金融機関や取引関係者から追加確認を求められることがあります。

委任状の文面だけで判断せず、司法書士や弁護士などへ確認することが重要です。


親の実印や権利証があっても売れない

実印、印鑑登録証明書、登記識別情報通知などを子どもが管理していても、それだけで売却権限を得るわけではありません。

これらは本人確認や登記に使われる重要な書類ですが、本人の売却意思に代わるものではありません。

親の印鑑を無断で押したり、本人になり代わって契約したりすることは、重大なトラブルにつながります。


第2章 最初に確認するべき5つのポイント

認知症の親の家を売りたいと考えたときは、すぐに不動産会社へ売却を依頼するのではなく、次の5点を整理しましょう。

1.不動産の名義

登記事項証明書などで、現在の所有者を確認します。

よくあるケースは次のとおりです。

  • 父親の単独名義
  • 母親の単独名義
  • 両親の共有名義
  • 親と子の共有名義
  • 亡くなった祖父母の名義のまま
  • 相続登記が終わっていない

名義人がすでに亡くなっている場合は、成年後見制度ではなく、相続登記や遺産分割の問題になります。

名義が複数人であれば、認知症の親以外の共有者との調整も必要です。


2.本人の判断能力

日常会話ができるかだけでは不十分です。

不動産売却について、

  • なぜ売るのか
  • いくら程度で売るのか
  • 売却後はどうするのか
  • 売却代金を何に使うのか

を本人が理解して説明できるかを確認します。

判断が難しい場合は、主治医、司法書士、弁護士などへ相談します。

不動産会社だけで医学的・法律的な最終判断をすることはできません。


3.本人が今どこで生活しているか

本人が、

  • 自宅で生活している
  • 病院へ入院している
  • 老人ホームへ一時入居している
  • 老人ホームへ長期入居している
  • 子どもの家で生活している

のかによって、売却の必要性や家庭裁判所への説明内容が変わります。

特に成年後見制度を利用する場合、本人が過去に住んでいた家や、将来戻る可能性がある家は「居住用不動産」に該当する可能性があります。

成年後見人等が本人の居住用不動産を売却する場合は、家庭裁判所の許可が必要です。現在は施設に入所しているため住んでいなくても、入所前に居住していた住宅や将来戻る可能性がある住宅も対象になり得ます。許可を得ずに処分した場合、その処分は無効となります。


4.家を売る必要性

売却の目的を明確にします。

代表的な理由は、

  • 老人ホームの入居一時金を支払う
  • 毎月の施設費を確保する
  • 医療費・介護費を支払う
  • 空き家の管理負担をなくす
  • 固定資産税や修繕費の負担を減らす
  • 老朽化や近隣トラブルを防ぐ

などです。

成年後見制度を利用する場合、単に「家族が売りたいから」ではなく、売却が本人の利益になる理由が重要になります。


5.売却後の住まいと資金計画

家を売った後、本人がどこで暮らすのかを明確にします。

  • 現在の老人ホームへ継続入居する
  • 別の施設へ住み替える
  • 子どもと同居する
  • 賃貸住宅へ移る
  • 自宅へ戻る可能性がある

といった計画が必要です。

売却代金についても、

  • 入居一時金
  • 毎月の施設費
  • 医療・介護費
  • 税金
  • 家財処分費
  • 将来の生活予備費

を見積もっておきます。


第3章 本人に判断能力がある場合の売却方法

本人が売主となって通常どおり売却する

本人が不動産売却の内容を理解できる場合は、原則として通常の不動産売却と同様に進められます。

一般的な流れは次のとおりです。

  1. 登記・権利関係を確認する
  2. 不動産会社へ査定を依頼する
  3. 売出価格と売却条件を決める
  4. 媒介契約を結ぶ
  5. 売却活動を行う
  6. 買主と売買契約を結ぶ
  7. 引渡しと所有権移転登記を行う
  8. 売却代金を本人名義の口座で受け取る

本人が施設へ入居している場合でも、契約場所を施設や病院に設定するなど、状況に合わせて進められることがあります。


本人の体調に配慮して手続きを進める

認知症の症状は日によって変動することがあります。

午前中は比較的理解できても、夕方になると混乱が強くなる方もいます。

そのため、

  • 本人が落ち着いている時間帯を選ぶ
  • 一度に長時間の説明をしない
  • 難しい専門用語を避ける
  • 家族だけで結論を誘導しない
  • 本人の意思を繰り返し確認する

といった配慮が必要です。


医師の診断書があれば必ず売却できるわけではない

医師の診断書は判断材料になりますが、診断書だけで売買契約の有効性が自動的に保証されるわけではありません。

医学的な判断と、契約時の意思能力に関する法律的な判断は同じではないからです。

特に売却金額が大きい場合や、家族間で意見が分かれている場合は、司法書士や弁護士を含めて慎重に確認した方が安心です。


家族が代理人として売却する場合

本人に判断能力があり、本人が売却を希望しているものの、

  • 施設から外出できない
  • 身体的な事情で手続きが難しい
  • 遠方の物件を売りたい

という場合には、子どもなどを代理人にする方法があります。

ただし、委任状には少なくとも、

  • 対象不動産
  • 売却に関する権限
  • 売買契約締結権限
  • 代金受領権限
  • 登記手続きに関する権限

などを明確にする必要があります。

本人確認の方法や必要書類は取引ごとに異なるため、事前に不動産会社と司法書士へ確認してください。


第4章 本人の判断能力が低下している場合は成年後見制度を検討

成年後見制度とは

成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などにより、契約や財産管理を一人で行うことが難しい方を法律面から支援する制度です。

2026年7月時点の法定後見制度は、本人の判断能力に応じて、

  • 後見
  • 保佐
  • 補助

の3類型に分かれています。

家庭裁判所が本人の状態や必要な支援を確認し、成年後見人、保佐人、補助人等を選任します。

なお、2026年6月24日に成年後見制度の見直しを含む改正法が公布されました。改正後は後見・保佐を廃止し、補助制度へ一元化する方向ですが、成年後見制度部分の施行日は公布から2年6か月以内に政令で定められます。したがって、現時点では現行の後見・保佐・補助制度を前提に手続きを進めます。


家族が申し立てても家族が後見人になるとは限らない

申立書に子どもなどを後見人候補者として記載することはできます。

しかし、誰を成年後見人等に選任するかは家庭裁判所が判断します。

次のような場合は、弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職が選任される可能性があります。

  • 親族間に対立がある
  • 財産額が大きい
  • 不動産売却を予定している
  • 遺産分割が必要
  • 候補者と本人に金銭関係がある
  • 複雑な財産管理が必要
  • 家族による管理に不明確な点がある

「自分が介護をしているから必ず後見人になれる」という制度ではありません。


成年後見人は本人の代理人として売却できる

成年後見人が選任されると、本人の財産管理や必要な契約を本人に代わって行います。

不動産売却についても、売却が本人の利益になると判断される場合は、成年後見人が本人の代理人として進められます。

ただし、後見人が自由に売却条件を決められるわけではありません。

  • 売却する必要性
  • 査定価格
  • 売買価格
  • 買主
  • 売却後の住まい
  • 売却代金の使い道

などを説明できるようにしておく必要があります。


第5章 成年後見制度を利用した不動産売却の流れ

ステップ1 家庭裁判所へ成年後見等を申し立てる

本人の住所地を管轄する家庭裁判所へ申立てを行います。

一般的には、

  • 申立書
  • 戸籍謄本
  • 住民票
  • 医師の診断書
  • 本人情報シート
  • 財産目録
  • 収支予定表
  • 預貯金資料
  • 不動産資料
  • 親族関係図

などを準備します。

必要書類は管轄裁判所や事案により異なるため、最新の案内を確認してください。


ステップ2 家庭裁判所が後見人等を選任する

家庭裁判所は、

  • 本人の判断能力
  • 財産状況
  • 親族関係
  • 必要な支援
  • 後見人候補者の適性

などを確認します。

必要に応じて本人、申立人、候補者との面接や、親族への意向照会が行われます。

後見人等が選任され、審判が確定すると、後見登記が行われます。


ステップ3 不動産の調査と査定を行う

後見人は、不動産会社へ査定を依頼し、市場価格を確認します。

査定では、

  • 近隣の成約事例
  • 現在の売出事例
  • 土地の形状
  • 接道状況
  • 建物の状態
  • 再建築の可否
  • 管理費・修繕積立金
  • 借地権・抵当権
  • 残置物
  • 境界

などを調べます。

家庭裁判所への許可申立てを予定している場合は、価格の根拠を説明できる査定書が重要です。


ステップ4 売却条件と今後の生活計画を整理する

後見人は、

  • なぜ売却が必要なのか
  • 売却しない場合にどのような負担があるか
  • 本人が自宅へ戻る可能性
  • 売却後の住居
  • 売却代金の使い道
  • 本人の意向

を整理します。

本人が自宅へ戻る希望を持っている場合や、施設入居が一時的な場合は、売却の必要性をより慎重に検討することになります。


ステップ5 居住用不動産なら家庭裁判所へ許可を申し立てる

成年後見人等が本人の居住用不動産を売却する場合は、家庭裁判所の許可が必要です。

居住用不動産には、現在住んでいる家だけでなく、施設入居前に住んでいた家や、将来戻る可能性がある家も含まれる場合があります。家庭裁判所の許可を得ないまま処分すると、その処分は無効です。

裁判所が公開する申立書では、居住用不動産処分許可の申立てに関する書式と記入例が案内されています。実際の審理では、追加資料の提出や事情説明を求められることもあります。

申立てでは一般的に、

  • 不動産の登記事項証明書
  • 固定資産評価証明書
  • 査定書
  • 売買契約書案
  • 売却代金の使途
  • 本人の生活状況
  • 施設の入居資料
  • 今後の収支見込み

などが必要になります。


ステップ6 買主との売買契約を結ぶ

家庭裁判所の許可が必要なケースでは、売買契約に、

「家庭裁判所の居住用不動産処分許可を得ること」

を条件として盛り込むことがあります。

許可前にどこまで売却活動や契約を進めるかは、後見人、不動産会社、司法書士などで事前に確認します。


ステップ7 決済・引渡しを行う

許可取得後、残代金の受領、所有権移転登記、鍵の引渡しなどを行います。

売却代金は本人の財産です。

後見人個人や家族の口座ではなく、本人の財産として適切に管理します。


ステップ8 家庭裁判所へ報告する

売却完了後は、

  • 売却金額
  • 諸費用
  • 入金先
  • 売却代金の管理状況
  • 本人の生活費への使用状況

などを家庭裁判所へ報告します。


第6章 居住用不動産と非居住用不動産の違い

居住用不動産

居住用不動産には、本人が現在住んでいる住宅だけでなく、

  • 入院前まで住んでいた自宅
  • 老人ホーム入居前に住んでいた自宅
  • 一時的に空き家になっている自宅
  • 将来戻る可能性がある住宅

も含まれる場合があります。

売却だけでなく、賃貸、賃貸借契約の解除、抵当権設定、建物の取壊しなども「処分」に該当する可能性があります。


非居住用不動産

本人が居住目的で利用していない、

  • 投資用マンション
  • アパート
  • 駐車場
  • 事業用物件
  • 本人が住んだことのない土地

などは、居住用不動産処分許可の対象にならない場合があります。

ただし、後見人の権限や売却の必要性、本人の利益は確認する必要があります。

「空き家だから非居住用」と単純に判断しないことが大切です。


第7章 家族信託をしている場合はどうなる?

家族信託とは

家族信託は、本人が元気なうちに、預貯金や不動産などの財産を信頼できる家族へ託し、決めた目的に従って管理・処分してもらう仕組みです。

信託では、一般的に、

  • 財産を託す「委託者」
  • 財産を管理する「受託者」
  • 財産から利益を受ける「受益者」

を定めます。


売却権限が契約に含まれていれば売却できる可能性がある

不動産を家族信託しており、受託者に不動産の売却権限が与えられている場合は、本人の判断能力が低下した後も、受託者が信託契約に従って売却できる可能性があります。

たとえば、

  • 父親が委託者兼受益者
  • 長男が受託者
  • 自宅を信託財産
  • 老人ホーム入居後に必要なら売却できる

という契約を設定しているケースです。


契約内容と信託登記を確認する

家族信託をしているからといって、必ず不動産を売却できるとは限りません。

確認すべき点は、

  • 対象不動産が信託財産に含まれているか
  • 売却権限が受託者に与えられているか
  • 不動産の信託登記が完了しているか
  • 売却に他の人の同意が必要か
  • 担保や住宅ローンが残っていないか
  • 売却代金の管理方法
  • 信託終了条件

などです。


家族信託は判断能力が低下してから新しく契約しにくい

家族信託は契約です。

本人が契約内容を理解できなければ、新たに家族信託を設定することは困難です。

「認知症になったので家族信託を使う」のではなく、判断能力があるうちに将来へ備える制度と考えるのが基本です。


家族信託だけで施設入居の問題がすべて解決するわけではない

家族信託は主に財産管理の仕組みです。

受託者は信託した不動産や金銭を管理できますが、当然に本人の法定代理人になるわけではありません。

そのため、

  • 老人ホームの入居契約
  • 介護サービス契約
  • 医療や福祉の手続き
  • 本人が行った不利益な契約の取消し

には対応できない場合があります。

必要に応じて任意後見や法定後見を組み合わせます。


第8章 老人ホーム入居費用のために家を売る場合

売却理由としてよくあるケース

認知症の親の家を売る理由として多いのが、老人ホーム費用の確保です。

老人ホームでは、

  • 入居一時金
  • 月額利用料
  • 管理費
  • 食費
  • 介護サービス費
  • 医療費
  • 日用品費

などが必要になります。

年金や預貯金だけでは不足する場合、自宅を売却して将来の生活費を確保することがあります。


売却価格だけでなく長期の収支計画が必要

「家が3,000万円で売れれば安心」と単純には判断できません。

売却時には、

  • 仲介手数料
  • 登記費用
  • 印紙代
  • 測量費
  • 解体費
  • 残置物処分費
  • 譲渡所得税・住民税

などが発生する可能性があります。

そのうえで、

  • 毎月の施設費
  • 医療・介護費
  • 衣類・日用品
  • 後見人報酬
  • 将来の施設変更
  • 葬儀・納骨費用

まで見込んだ資金計画が必要です。


売却代金は本人のために使う

後見人が売却した場合、売却代金は本人の財産です。

次のような本人のための支出に使います。

  • 老人ホーム費用
  • 医療費
  • 介護費
  • 生活費
  • 税金
  • 本人の財産管理費用
  • 本人に必要な家財やサービス

一方、

  • 子どもの住宅ローン返済
  • 孫への贈与
  • 家族旅行
  • 相続税を減らすための贈与

など、本人の利益と認められにくい使い方は原則として困難です。


第9章 共有名義・相続未登記・住宅ローンがある場合

親子や夫婦の共有名義

親の持分だけを売ることは法律上可能な場合がありますが、一般の買主が共有持分だけを購入するケースは限定的です。

不動産全体を売るには、原則として他の共有者の協力も必要です。

認知症の親の持分については、本人の判断能力や後見人の権限を確認します。


亡くなった人の名義のまま

登記名義人が祖父母や亡くなった配偶者のままの場合は、まず相続関係を整理します。

  • 相続人の確定
  • 遺産分割協議
  • 相続登記

を行ったうえで売却します。

相続人の一人が認知症で遺産分割協議を理解できない場合は、成年後見人等の選任が必要になることがあります。

また、後見人自身も同じ相続人である場合は利益相反となり、特別代理人等が必要になる可能性があります。


住宅ローン・抵当権が残っている

住宅ローンが残っている場合は、売却代金などでローンを完済し、抵当権を抹消する必要があります。

売却価格よりローン残高が多い場合は、

  • 自己資金で不足分を補う
  • 金融機関と任意売却を協議する

などの対応が必要です。

成年後見人が関係する場合は、金融機関や家庭裁判所との調整も必要になります。


第10章 認知症の親の家を売るときにかかる費用

主な費用は次のとおりです。

不動産売却に関する費用

  • 仲介手数料
  • 売買契約書の印紙代
  • 抵当権抹消登記費用
  • 住所・氏名変更登記費用
  • 測量費
  • 解体費
  • 残置物処分費
  • ハウスクリーニング費用
  • 引越し費用

成年後見制度に関する費用

  • 申立手数料
  • 登記手数料
  • 郵便切手代
  • 医師の診断書費用
  • 必要な場合の鑑定費用
  • 弁護士・司法書士への申立支援費用
  • 成年後見人等への報酬

後見人報酬は、後見人等が家庭裁判所へ報酬付与の申立てを行い、家庭裁判所が本人の財産や業務内容を考慮して決定します。


居住用不動産処分許可の申立費用

裁判所の案内では、居住用不動産処分許可の申立手数料は収入印紙800円分とされ、ほかに郵便切手等が必要です。

なお、国税庁は、成年後見人が居住用不動産を売却するために支払った家庭裁判所への許可申立手続費用について、一定の考え方のもとで譲渡所得の計算上の譲渡費用として扱う事例を公表しています。具体的な申告は税理士や税務署へ確認してください。


譲渡所得税・住民税

不動産を売却して利益が出た場合、譲渡所得税と住民税が発生する可能性があります。

税額は、

売却価格-取得費-譲渡費用-適用できる特別控除

などを基に計算します。

本人が居住していた住宅であれば、一定の要件を満たすことで居住用財産の特例を利用できる可能性があります。

認知症、施設入居、住所変更、売却時期などにより適用判断が変わるため、売却前に税理士や税務署へ確認してください。


第11章 よくある失敗と注意点

失敗1 認知症を隠して契約を進める

「話が複雑になるから」と認知症を隠して契約すると、後から契約の有効性を争われる可能性があります。

買主や不動産会社にも大きな損害を与えかねません。


失敗2 委任状だけで売れると思い込む

本人に判断能力がない状態で作成された委任状は、売却を安全に進める根拠にはなりません。


失敗3 子どもの口座で売却代金を受け取る

売却代金は親本人の財産です。

家族の口座で受け取り、生活費と混在させると、親族間トラブルや財産管理上の問題につながります。


失敗4 成年後見人になれば自由に売れると思う

成年後見人は本人のために財産を管理する立場です。

家族の都合や将来の相続人の利益を優先して売却することはできません。


失敗5 施設に入ったからすぐ家を売る

老人ホームへの入居が一時的な場合や、本人が自宅へ戻る可能性がある場合は、売却を急がない方がよいこともあります。

本人の希望、施設の契約期間、介護状態、家の維持費などを総合的に判断します。


失敗6 査定額だけで不動産会社を選ぶ

査定額が高い会社が、必ずその価格で売却できるとは限りません。

特に成年後見案件では、

  • 家庭裁判所への提出資料
  • 売却理由の整理
  • 司法書士との連携
  • 施設や家族との調整
  • 残置物処分
  • 売却代金の管理

まで理解している会社を選ぶことが重要です。


第12章 認知症の親の家を売るための判断チャート

本人が売却内容を理解できる

本人が売主として通常売却を検討します。

身体的な事情がある場合は、有効な委任契約により家族が代理する方法を確認します。


判断能力に不安がある

主治医、司法書士、弁護士などへ相談し、本人が売却内容を理解できるか確認します。

不動産会社だけで判断しないようにします。


判断能力が低下している

すでに有効な家族信託や任意後見契約があるか確認します。

ない場合は、法定後見制度の利用を検討します。


成年後見人等が選任されている

後見人等が売却の必要性を確認し、不動産査定と生活計画を整理します。

居住用不動産の場合は家庭裁判所の許可を申請します。


第13章 相談事例で見る売却方法

事例1 軽度の認知症だが売却内容は理解できる

母親は軽度認知症と診断されていますが、自宅を売って老人ホームへ移ることを理解し、自分の希望を明確に伝えられました。

司法書士などによる本人確認を行い、母親本人を売主として売却を進めることが検討できます。

重要なのは、診断名ではなく契約時の判断能力です。


事例2 施設入居後に判断能力が大きく低下

父親はすでに老人ホームへ入居し、売却の意味を理解できません。

家族信託や任意後見契約もありません。

このケースでは、家庭裁判所へ成年後見等を申し立て、選任された後見人等が本人の代理人として売却を検討します。

自宅は施設入居前の居住用不動産に当たる可能性が高いため、家庭裁判所の許可が必要です。


事例3 家族信託を設定済み

父親が元気なうちに、自宅を長男へ信託し、老人ホーム入居後に必要なら売却できる契約を結んでいました。

父親の判断能力が低下した後も、長男が受託者として売却できる可能性があります。

ただし、契約書、信託登記、売却権限、売却代金の管理方法を専門家が確認します。


事例4 母親と子どもの共有名義

母親と長女が2分の1ずつ所有しています。

母親の判断能力が低下している場合、長女の持分だけでは不動産全体を売却できません。

母親の持分について成年後見等の対応を行い、共有者である長女と後見人等が共同して売却を進めます。


事例5 相続登記が終わっていない

自宅は亡くなった父親名義のままで、母親が認知症です。

まず父親の相続人を確定し、遺産分割や相続登記を行う必要があります。

母親が遺産分割協議を理解できなければ、成年後見人等の選任が必要になる可能性があります。


認知症の親の家の売却に関するよくある質問

認知症と診断されたら家は売れませんか?

診断されたことだけで売れなくなるわけではありません。

本人が売買契約の内容と結果を理解できるかが重要です。


子どもが親の代わりに売れますか?

子どもであることだけでは売却できません。

本人の有効な委任を受けるか、成年後見人等として適切な代理権を持つ必要があります。


委任状があれば売れますか?

本人が委任内容を理解し、自分の意思で委任していることが必要です。

判断能力が失われた後に形式だけ整えた委任状では、安全に売却できるとは限りません。


親の実印を持っていれば売れますか?

売れません。

実印や権利証を持っているだけでは、売却権限を取得できません。


成年後見人になれば必ず売れますか?

必ずではありません。

売却が本人の利益になることが必要です。

居住用不動産の場合は家庭裁判所の許可も必要です。


施設に入居した家も居住用不動産ですか?

施設入居前に住んでいた家や、将来戻る可能性がある家も居住用不動産に含まれる場合があります。


家庭裁判所の許可なしで売るとどうなりますか?

成年後見人等が本人の居住用不動産を許可なく処分した場合、その処分は無効になります。


家族信託があれば売れますか?

対象不動産が信託され、受託者に売却権限があり、信託登記等が適切に行われていれば売却できる可能性があります。

契約書を専門家に確認してもらいましょう。


認知症になってから家族信託を作れますか?

本人が契約内容を理解できる状態であれば可能性はあります。

理解できない状態では、新たな契約は困難です。


売却代金を子どもの口座へ入れてもいいですか?

原則として避けるべきです。

売却代金は本人の財産として、本人名義の口座や適切な管理口座で管理します。


売却代金を相続人へ分けられますか?

本人が存命中は、原則として本人の財産です。

将来の相続人だからという理由で分配することはできません。


売却代金を老人ホーム費用に使えますか?

本人のための施設費、医療費、介護費、生活費に使用できます。


家を売れば成年後見制度を終了できますか?

現行制度では、予定していた不動産売却が終わったことだけを理由に、当然に成年後見が終了するわけではありません。

本人の判断能力や支援の必要性などにより制度が継続することがあります。


後見人の費用は誰が払いますか?

原則として本人の財産から支払われます。

報酬額は家庭裁判所が判断します。


兄弟の一人だけで成年後見を申し立てられますか?

申立権のある親族であれば申し立てられます。

ただし、後見人を誰にするかは家庭裁判所が判断します。


親が売却に反対していても売れますか?

本人の判断能力、生活状況、売却の必要性によって異なります。

後見人は本人の意思を尊重しながら、本人の利益を考えて対応する必要があります。


老人ホームを先に決めるべきですか?

本人の住まいを確保せずに自宅だけを売るのは危険です。

原則として、入居先や今後の生活計画を確認したうえで売却を検討します。


不動産会社はどこでも対応できますか?

通常の売却と比べて、成年後見、家庭裁判所、施設、司法書士などとの連携が必要です。

認知症や後見案件の実務を理解している会社へ相談することが望ましいでしょう。


まとめ|認知症の親の家を売るには、本人の判断能力を最初に確認する

認知症の親の家を売る際、最初に確認すべきなのは、本人が不動産売却の内容を理解できるかどうかです。

本人に判断能力があれば、本人が売主となって通常の売却を進められる可能性があります。

本人が身体的な理由で動けない場合は、有効な委任契約により家族が代理する方法も考えられます。

一方、本人の判断能力が低下し、売却内容を理解できない場合は、子どもが勝手に売ることはできません。

その場合は、

  • すでに家族信託があるか
  • 任意後見契約があるか
  • 法定後見制度が必要か

を確認します。

成年後見人等が本人の居住用不動産を売却する場合は、家庭裁判所の許可が必要です。

また、売却では家だけを見ればよいわけではありません。

  • 老人ホームの入居先
  • 毎月の施設費
  • 身元保証人
  • 緊急連絡先
  • 医療・介護
  • 売却代金の管理
  • 相続
  • 葬儀・納骨
  • 死後事務

まで同時に整理することが、ご本人とご家族の安心につながります。


ご相談|老人ホーム・身元保証・成年後見・不動産売却をまとめて整理します

一般社団法人東京都社会福祉支援センターでは、高齢者ご本人とご家族が抱える複数のお悩みを、まとめてご相談いただけます。

  • 認知症の親の不動産売却
  • 成年後見制度
  • 家族信託・財産管理
  • 老人ホーム紹介
  • 身元保証・身元引受
  • 相続・遺言
  • 死後事務
  • 空き家・残置物整理

「認知症でも売却できる状態なのか分からない」

「成年後見を申し立てる必要があるのか知りたい」

「施設費用を確保するために実家を売りたい」

「老人ホーム探しと家の売却を一緒に進めたい」

「身元保証人や緊急連絡先もいない」

このような段階からでもご相談いただけます。

制度や不動産売却だけを先に決めるのではなく、ご本人の判断能力、生活、財産、住まい、家族関係、将来の希望を確認し、必要な支援を整理することが大切です。

※本人の意思能力、成年後見申立て、居住用不動産処分許可、登記、税務等については、家庭裁判所、弁護士、司法書士、税理士等による個別確認が必要です。


当団体は東京都指定居住支援法人です

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